脳卒中の後遺症を深く掘り下げて考える

脳の後遺症のイメージ 医療

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脳卒中の後遺症と一言で言っても、麻痺が手に出たり、脚に出たり…
話すのが大変になったり、話せるけど理解が出来なくなったり…
筋肉の力が入りにくくなったり、逆に常に緊張状態になったり…
いろいろと違った症状が出ますし、後遺症の程度も変わってきます。これってなぜか知っていましたか?

今回はその脳卒中の後遺症について掘り下げて書いていきますね。

 

脳の解剖学

まず、脳の解剖学というものを知っていただけたらなと思います。ひとくくりに脳といっても、その脳の働きは場所によって違います。

  • 脳の前の方では理性など
  • 右側の脳は左半身、左側の脳は右半身
  • 下の方は知覚情報全般
  • 後ろの脳は視覚情報

などなど。例はかなり大雑把に挙げましたが、実際はかなり細かく別れています。それを表すのに、ブロードマンの脳地図というものもあります。

ブロードマンの脳地図
図:ウィキペディアより

このブロードマンの脳地図では、番号に対してどういった機能があるかがまとめられているんです。これを見れば、どの部分の障害で、どういった障害が出るかがわかるようになります。

 

脳血管の走行にも注意

まずはこの画像を見てください。

脳の血管走行

図:ヒューマンアナトミーアトラス(アプリ)よりスクリーンショット

これは脳の血管の図ですね。脳の血流は、当然血管によってもたらされています。脳梗塞は血管が詰まること、脳出血は血管の出血にあたるのですが、これらが血管のどこで起こるかによってその後の障害にかなり違いが出ます

脳の血管走行

この図では、青い丸で囲まれたところが梗塞なり出血なり起きたとします。すると青色の矢印で指した2本の血管に血液が回らない状態となります。

脳の血管走行

次にこっちの青丸。さっきのものに比べてほんのちょこっと位置が上にズレただけ。でも、障害を受ける血管は一つだけなので、血流が止まる範囲が小さく済むので、こっちの方が脳の損傷も小さく済むわけです。

つまり、梗塞や出血が生じる場所が根元に近ければ近いほど重篤な症状が起きてしまうんです。小さな脳梗塞でも後遺症が重いケースは、こういった損傷場所の影響があるわけですね。

 

治療のアプローチ

脳卒中の後遺症に関して一番大きな影響を与えるのは損傷の場所と大きさですが、次に「治療」というものも大きな影響を与えます。

脳卒中の早期治療の効果

まず脳梗塞において、t-PA(血栓溶解療法)という治療手段があります。これを脳梗塞を発症してから4.5時間以内に行うことが出来れば、その後の回復が見込みやすくなると言われています。

t-PA療法の効果のグラフ
山下徹ら.t-PA 4.5時間時代の脳保護療法併用の効用.Mebio 32(12): 80-85, 2015.

ちょっと小難しいグラフですが、下のメモリの270が4.5時間のポイント。それを過ぎると効果がみられなくなっていきます。まずは早期診断と治療で後遺症の可能性を減らします。

この4.5時間を超えたあとは、発症から24時間以内であればラジカットと呼ばれる薬が選択に入ります。こういった、発症からのフェイズによって薬の選択が変わっていくんですね。

脳出血に対しては、出血がひどい場合は手術が選択肢。それによって出血による脳の圧迫を改善していくわけです。もしくは投薬によって脳の腫れを引かせたり、血圧のコントロールを行なっていきます。
ちなみに脳卒中の発症初期はかなり良い勢いで回復するケースがありますが、これは脳の腫れが引いてくれたからになります。

このあたりはドクターの領域ですので…もっと深く知りたい方は国立循環器センターのHPに色々情報が載っているのでそちらを見てください。(http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph02.html

脳卒中に対するリハビリの効果

脳の回復と機能の回復に関して、当然リハビリも大事です。脳卒中の回復の流れの中で、その回復を促進するようにアプローチしていく必要があります。

このリハビリの効果において、脳卒中ガイドラインでもにも、「廃用(はいよう)症候群を予防し、早期のADL(日常生活活動)向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとに、できるだけ発症早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる」と書かれています。

まずは早期のリハビリがとても大事ということになります。リハビリを行わなければ、当然身体の機能回復は難しく、後遺症が残る可能性が高くなっていきます。

ちなみに脳卒中の後遺症に関して、本人のリハビリに対するやる気も大きな影響を与えます。特に大きな損傷のある脳卒中の場合、身体が動かせなくなり、後遺症が残る可能性が高いことを告げられます。それによって意欲的にリハビリに取り組む意欲が持てないケースがあります。身体を動かす意欲そのものも低下するので、ベットで寝たままなことが多くなり、そしてさらに身体を動かす能力が悪化していくわけです。

こういった身体を動かす意欲が乏しいケースであれば、脳卒中の後遺症が強く残る危険性が高くなっていきます。

後遺症が残った場合は諦めるしかないの?

まず結論からいくとNO。諦めないで頑張るという選択はして良いと思います。特に脳卒中の発症から半年の間は機能が回復していく時期と言われています。その半年の間、リハビリテーション病院などでしっかりリハビリをしていきたいですね。

そしてその半年経った時点で改善の見込みがなくなるかと言うと…それなりに回復は厳しい状態になっています

回復は厳しい状態なのですが…でも改善目指して頑張りたい人がわざわざ諦める必要はありません。この脳卒中の発症から半年で回復が難しくなるというのは、統計学の話です。100人いれば100人とも改善しないということを示している訳ではないので、自分が例外になるという気持ちで頑張ることは悪くないですよ。
(頑張ることそのものだけで生活に張りが出て元気になる方もいますし、逆に身体機能の回復を諦めることで気持ちに落ち着きが出て、ポジティブな気持ちに変わる方もいます。このあたりは一長一短があり、性格も含めて一概にどうするのが正しいとは言えません)

脳卒中の発症から半年を越えても改善が見込めるケースもある

実は、そうなんです。脳卒中の発症から半年を越えていても、改善が見込めるケースはあります。
どんなケースかは以下に書いていきますね。(改善が得られるかは全てケースバイケースです)

  • まず、もともとリハビリをしっかり受けていないケース。脳の障害の程度に比べて身体機能が劣っていることが多いので、そのギャップを埋めていくことは可能です。実際BOZUもそんなケースを度々診てきました。なぜリハビリを受けていなかったのか…そんなケースがボチボチあるので、改善が必要だなと感じます。
  • そして在宅ではよくみられますが、一度よくなったもののそこから運動をしなかったり自主トレーニングをサボったことによって能力が下がっているケース。そこに対してはまた集中してリハビリを行うことで回復させていくことは可能です。(短期集中のリハビリ入院とかはここを狙って行うことが多いです)
  • 次はBOZUの個人的な感覚なのですが…受けていたリハビリに偏りがあるケース。脳卒中のリハビリには「動作練習」「感覚練習」「筋力トレーニング」「筋の使い方の練習」「ストレッチ」などなど、いろんなパターンがあります。あなたに「動作練習」が必要なのに、他の手段ばかりでリハビリを受けていた場合、そこで「動作練習」を行えば能力が改善する感覚があります。ついでに言えば、これからは「 VR」や「ロボット」などの最新技術を使ったリハビリの効果が見込めるかもしれませんね。
  • 最後は、アスリートのトレーニングのようなイメージ。正常な人の身体には、そもそも限界ってあるわけではありません。専門家の指導のもとでアスリートのようにしっかりと身体を鍛えることで、普通の生活を送る場合と比べて回復が見込める可能性があります(鍛えるだけでなく、筋の使い方の学習も必須です)。リハビリという概念よりもトレーニングになるので…意欲と血圧管理に状況が左右されます。

こういった部分も含めて、改善目指してリハビリを続けていきたいところです。
(こういった話の時に、医療財源の話をする方がいます。「改善の見込みが低いリハビリに医療費を使うのか!?」と…たしかに医療費は莫大なのでそれを削減する必要がありますが…今の医療費を使っているのは高度先進医療と投薬がかなりの数です。そっちと比べれば、こういったケースでのリハビリはほんと微々たる金額です。)

 

 

 


と、いうことで今回の記事は
「 脳卒中の後遺症を深く掘り下げて考える」でした!
コメント、違う視点からの意見、質問など大歓迎です。お気軽にどうぞ。

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