ストレッチ シリーズ⑥-ストレッチに関する論文をひたすら集めてみた-

山積みの論文 健康

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ストレッチの効果って、ネットには嘘や効果のわからないものなど、いろんな情報が入り混じっています。
なので今回はひたすら論文を集めてみました。ヒトでの症例研究や動物実験、そしてRCTと呼ばれる情報の信頼度が高いものまで。結構なボリュームですが、是非ご覧ください。
(あえて専門用語そのまま使っています。一般用語に翻訳すると、せっかくの論文なのに意味が変わってしまうことがありますので…)

前回の記事はこちら「ストレッチ シリーズ⑤-実践!股・膝・足・手関節のおすすめ14-

ストレッチ(関節可動域運動)に関する論文25選

さっそくその研究データ達をご紹介させて頂きます。 ちなみにですが、ストレッチの効果に対して反対の意見も含めて書いてあります。ちょっと混乱するかもしれませんが、反対意見を知ることも大事ですよ。

1. 足関節背屈制限,肩関節周囲炎,腰痛,変形性膝関節症,ハムストリングス損傷,足底筋膜炎,頸部痛,線維筋痛症に対するストレッチングの有効性が示され,膝関節屈曲拘縮の改善効果は見出せなかった。(注:拘縮=柔軟性が強く低下し、病的に硬くなっている状態のこと)

森山英樹ら:運動器疾患に対するストレッチングの効果-システマティックレビューとメタアナリシスによる検討-A Systematic Review and Meta-analysis of the Effectiveness of Stretching for Musculoskeletal Disorders
理学療法学 38(1): 1 -9 2011
システマティックレビューと言われる信頼性の高いと言われる研究方法です。ストレッチの効果、結構いい感じですね。一点、膝が曲がったまま固まってしまったケースはなかなか改善しにくいとあります。これはBOZUもリハビリしながら感じていました。ただ、改善するケースももちろんありますので誤解のないように…(たくさんのデータを集めて平均を取っていくので、リハビリ効果の出ない人が多いと、良くなる人がいる場合でも「効果なし」とされます。)

2. 拘縮のある人とそのリスクのある人を対象にストレッチの効果を検討したものの、明確な効果は得られなかった。

Katalinic OM:Stretch for the treatment and prevention of contractures.Cochrane Database Syst Rev. 2010 Sep 8;(9):CD007455. doi: 10.1002/14651858.CD007455.pub2. Review.
このデータはコクランライブラリーという情報元から得られたもので、厳格な基準を満たした計35個の研究を統合して意見が述べられています。先ほどの論文とは違いネガティブな印象。

3. 4週間固定したねずみの足関節に1日30分のストレッチを行うことで柔軟性の改善が得られた。

沖田実 他:拘縮の病態とストレッチング.理療探求3:29−36.2000
これは麻酔した状態でストレッチを行っているのでそこは考えておく必要がありますが…4週間完全に固定すると筋肉、関節はかなり硬くなります。そんな状態でもストレッチによって改善してくれているので、やっぱり諦めないことが大事ですね。

4. ストレッチの時間は6秒以上という報告もあれば、30秒程度が良いという報告もあり,一定していない。

Domimguez RH:ストレッチングを巡る諸問題.Sports medicine Quartery 18:61-72,1995
結局のところストレッチ時間は永遠のテーマ。統一した答えがあれば嬉しいのですが… やっぱり身体の部位と硬さの原因次第になってくるのではないでしょうか。ストレッチの時間について知りたい方はこちらをどうぞ「シリーズ②効率の良い伸長時間と黄金ルール4!

5. 45秒のストレッチは血流増加を認めたが、90秒のストレッチングは逆に低下するなど、筋の長さと血流増加に関して正の相関があるとはいえない。

木村直人,岩根久夫・他:筋疲労回復の及ぼすストレッチングの効果 近赤外分光法による評価 .体力科学41(6):684,1992
血流を上げることで老廃物が流れ、疲れにくい身体に変わりますが、とにかくたくさんストレッチをすれば血流が上がるわけではないようです。自分にとって良さそうな時間を見つける必要がありそうですが、やっぱり血流増加は筋肉を使うのが一番かもしれませんね。

6. ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋において、30分ストレッチを行うも短期的な効果は認められなかった。一方、15分のストレッチでは関節角度の改善を認めた。

山崎裕司,市川祐生・他:下腿三頭筋に対するストレッチ時間と効果の関連.高知リハビリテーション学院紀要16,35-37,2015
一般的にストレッチは長い方が良いとされていますが、ここでは30分のストレッチより15分のストレッチが効果がありました。一般論とは違う意見が出てきましたね。これがいわゆる例外で、実際そんな例外は度々起きます。と、同時に今回のケースではストレッチの負荷や内容を変えたら30分の方がよくなる可能性もあります。

7. ホットパックによる温熱療法によって、関節の可動域の増加が認められ、それは一定時間に渡り維持される

宮崎学,鈴木重行・他:ハムストリングスの柔軟性に対するホットパックの即時的効果と効果時間持続時間について.愛知県理学療法学会誌27:51-51,2015
温めることによってストレッチの効果が上がるといった話はこういった研究からきています。お風呂上がりのストレッチ、良さそうですね。

8. 10分間の人工炭酸泉浴およびさら湯浴により足関節背屈角度は増加する

水野貴正,中野国隆・他:人工炭酸泉への入浴時間の違いが関節可動域に与える影響.日生気誌49(4):149-155.2013
ここ最近炭酸浴が身体に良いと言われていますが(血流アップ、美容効果など)、これは表面だけでなく筋肉内の深いところも血流アップに繋がると言われています。ただ身体の柔軟性向上には普通のお湯でも良いみたいです。先ほどの論文と合わせて考えても、やっぱりお風呂上がりでストレッチしてあげるのは良さそうですね。余談ですが、トレーニング後の炭酸泉入浴は、筋硬度や血中乳酸値が早く回復するようです。

9. 4週間の間、膝伸展筋に対しストレッチを行うことで(週に3回、1日10分)、同筋肉の筋力の増加が認められた。 しかし、同じ条件で膝屈曲筋に対してストレッチを行うものの、筋力の増加は認められなかった。

高橋健太,野末琢馬・他:長期的なストレッチが筋力に与える影響,愛知県理学療法学会誌27:50-50,2015
もともと著者がストレッチで筋力が上がると思っていたのは高齢者でしたが… 今回の実験対象は健常大学生。若い人でもストレッチで筋力が上がるようです。ただし筋肉の種類、場所によって効果は変わる様子。今後も研究が必要ですね。詳細が気になる方はシリーズ①-ストレッチを始める前に知っておくと得すること-の「伸ばす、緩める事で得られる嬉しい効果」に書いてあります。

10. ストレッチを継続的に行うとすると、その効果はその初回で得られるものが最大となり、次回以降効果は減少する。またその効果を持続させるためには、初回の効果が残っている数日中に再びストレッチを行うことが効果的であり、連続して実施すると10日ほどで有意に効果が得られるとする報告もある。

古館昌宏,和久貴洋・他:スタティック・ストレッチングによるハムストリングス及び前腕屈筋群の柔軟性獲得過程に関する研究.体力科学48(6):979,1999
ストレッチはやり始めが一番身体が柔らかくなりやすいとのこと。その分すぐに戻りますが…とにかく継続して10日間出来れば中長期的な効果に繋がりやすいようです。もちろん10日で終わらせたらもったいない。そのままずっと続けていくのが好ましいですね。

11. 筋の持続収縮、過剰収縮が可動域制限に影響を与えているような例では、振動刺激を与えることで痛みの軽減と可動域の向上が得られる。

中野治郎,他:振動刺激を利用した関節可動域制限の治療法.理療探求7:24-28,2004
この実験では1分間という短い時間で、マッサージ器を使って揺らすだけでそれなりの効果が得られていました。この場合の可動域の上昇は、筋肉の異常な収縮つまり力が入っていた状態がリラックス出来たためと考えられます。たまにマッサージ機が嫌いというセラピストがいますが、効果があるなら是非試してみたいですね。

12. スタティックストレッチ後とダイナミックストレッチ後の立ち幅跳びでは、ダイナミックストレッチ後にパフォーマンスの向上がみられた。ただし、スタティックストレッチ後に筋瞬発力低下するとの報告があるものの、今回の研究ではスタティックストレッチ後でもパフォーマンスの低下は認められなかった。

和多山龍,松尾祟・他:種類が異なるストレッチが関節可動域と瞬発力に及ぼす影響.リハビリテーションスポーツ34(1):14-15,2015
静的ストレッチ(普通のストレッチ)でパフォーマンスが下がる…最近そんな風に言われることがあります。ここに関して私は肯定も否定もしませんが、ダイナミックストレッチでパフォーマンスが上がるということには大賛成です。

13. クールダウンで行うストレッチは、運動終了後早く始めるほど高い効果が望める

柳田泰義、吉田正樹・他:赤外線レーザー光による運動時及びストレッチ時の血中Hb変化.体力科学48(6):749,1999
難しい内容でしたので詳細は省きましたが、この研究では身体のヘモグロビンの変化をみています。ヘモグロビンは酸素を運搬するものですね。運動後はとにかく早くストレッチしてあげた方が、翌日の疲れを減らすことに繋がります。そういえば外国の軍隊の映画で、深いジャングルを進んでいる中休憩を取ったらすぐにストレッチを始めていました。疲労困憊にもかかわらずです。それが後々身体の回復に繋がっていることを知っているんですね。

14. ストレッチでは運動後の筋肉痛を防ぐのに直結するような効果は得られなかった。

Herbert RD1, de Noronha M:Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul 6;(7):CD004577. doi: 10.1002/14651858.CD004577.pub3.
先ほどとは違い「筋肉痛」に関する研究のレビュー(複数の研究を集めたもの)です。筋肉痛の改善に効果がない…残念ですが、クールダウンが効果なしとは言ってないのでそこは誤解をせずにいてください。そういえば実は筋肉痛ってメカニズムがあまりよくわかってないんです。トレーニングなどで筋繊維が切れたら痛みに変わるのが一般的な意見ですが、それだけじゃあ説明できないようなことがたくさんあります。

15. ストレッチポールでの運動を長期的に用いることによって、呼吸機能の改善が認められる

國廣澄仁,岡田和也・他:ストレッチポールでの運動が呼吸機能に及ぼす影響.慢性期リハビリテーション学会誌(2):175-175,2015
ストレッチポールはストレッチ以外にも効果があります。背中を乗せてゴロゴロしましょう。呼吸機能が上がれば疲れにくい身体に。ストレッチポールを買ったはいいものの、押入れに封印してしまった方もいると思います。この機会に取り出してみては如何ですか?
ちなみにですが、ストレッチポールはバスタオルでも代用できますよ。ストレッチポールの代わりにバスタオルを丸めよう

16. 姿勢筋緊張の影響によるもので、健常成人の場合は臥位よりも座位や立位といった抗重力位の方が伸張反射の利得が抑えられ、下肢の筋緊張が低下すると考えられる

沖田実:関節可動域制限第2版212-212,2013
寝た状態でストレッチをしようとしても、何故か身体の緊張が上がる人がいます。そういった場合は逆に座った状態や立った状態でストレッチをすることでリラックスして伸ばすことができる場合があります。寝たほうが良いというのは固定観念かもしれませんね。

17. ゆっくりとした呼吸をすることで、不安を感じにくくなる。

Homma I and Masaoka Y:Breathing rhyms and Emotions.physial.93(9):1011-1021,2008
不安を感じにくくなることでリラクセーションが得られます。そうすれば筋肉の緊張もとれてくるのでストレッチの効果が上がっていきます。

18. ラットの足関節を4週間全くの固定状態においた場合、その後2週間ストレッチを実施したとしても、ストレッチの効果は乏しい。尚、この時不溶性コラーゲン(伸びないコラーゲンのイメージ)は比較群より有意に高値を示した。

沖田実:関節可動域制限第2版193-194,2013
組織の繊維化と呼ばれるものになりますが、これになってしまうとどうしてもストレッチの効果は得にくいです。この実験では完全に固定しているのが4週間!普通に生活していればこんな状態はあまりないので、諦めないでくださいね。ちなみに別の研究で2週間の固定ではストレッチ効果があるとされていました。

19. ラットの足関節を固定すると、固定後4週間までの間に可動域制限が大きく進んでいく。

沖田実:関節可動域制限第2版193-194,2013
何事も最初が肝心。身体が動かせない状態に変わると一気に硬くなっていくので早めの対処が必要ですね。

20. 動物実験において、一日30分間のストレッチで7日間は関節可動域を維持出来た

Ono T,et al:The effect of ROM Exercise on Rats with Denervation and Joint Constracture.21:173-176.2009
ねずみさんの実験で関節を動かさないように固定して、1日30分のストレッチを行った実験です。一日30分のストレッチで効果が得られるというのが読み取れます。ここから自身で身体を動かすことが出来ない寝たきりの患者様でも、毎日30分間ストレッチをすれば関節が固まるのを防げる可能性があります。

21. 30秒×10回のストレッチを週に5回実施した場合、関節拘縮を防ぐことが出来なかったものの、60秒×5回のストレッチで関節拘縮を防ぐことが出来た。

上村沙世,吉本陽二・他:除神経不動モデルラットにおける関節拘縮予防に必要な関節可動域運動の検討.奈良理学療法学4:37-38,2012
先ほどの論文であった「30分ストレッチ」より短い時間でも効果が得られる可能性がみつかりました。また、今回の実験ではストレッチ時間は合計すれば共に5分。同じ時間なら、一回のセット数を減らして長い時間伸ばしてあげた方が効果的かもしれません。

22. ラットの実験で、関節拘縮(関節が完全に固まること)の発生予防のためには20時間/日の関節運動が必要である

小野武也,沖貞明・他:関節可動域制限の発生を予防するために必要な関節運動時間の検討.理学療法科学27(4):489-491,2012
急に20時間関節運動が必要という大きな数字が出てきて驚きですが、4時間完全に固定しても残り時間ある程度動かしていれば大丈夫…と、捉えました。人の身体は寝ている時でも動いているので、完全に動かないで止まることはほとんどありません。むしろ4時間固定しても大丈夫とすればあるでは意味プラスに捉えることもできるデータですね。

23. 関節拘縮発生を予防するために必要な関節運動の頻度と時間は一日1回30分である

Williams PE:Use of intermittent stretch in the prevention of serial sarcomere loss in immobilized muscle.Ann Rheum Dis49:316-317,1990
ちょこちょこ出てくる30分という数字。でもこれも関節が固まるのを防ぐための時間。より「効果的に身体を柔らかくするストレッチ時間とは違う」ので誤解しないで下さいね。

24. 超音波療法における関節可動域の改善では、1.5w/cm2の照射強度が0.5w/cm2、1.0w/cm2よりも高い効果を示した

杉山和成,岡山知世・他:超音波出力強度の違いが関節可動域に与える影響.静岡理学療法ジャーナル(29):39-42,2014
超音波の機械を使ってストレッチすると効果があると言われ臨床でも使われています。これはたくさん論文が出ています。超音波をやる場合は機械の強度設定にもきちんと注目して行いたいですね。

25. 関節可動域制限の発生抑制に超音波の使用が効果を示した。

沖田実:関節可動域制限第2版193-194,2013
超音波を使うことでコラーゲン繊維の可動性を保つことが出来るようです。柔軟性改善に効果があると言われていましたが、どうやら身体が硬くなるのを防ぐ作用もありそうです。

 

 

いろんな論文がありましたね。当然「論文が絶対正しい」というわけではありません。
反対意見も参考にしながら、ストレッチに励んでもらえたらと思います。
と、いうことで今回の記事は
「 ストレッチ シリーズ⑥-ストレッチに関する論文をひたすら集めてみた-」でした!

ストレッチシリーズの続きも更新中。ぜひ見てあげてください〜〜

ストレッチ シリーズ
①ストレッチを始める前に知っておくと得すること
②効率の良い伸長時間と黄金ルール4!
③基本手技と裏技手技
④実践!体幹と肩関節のおすすめ10
⑤実践!股・膝・足・手関節のおすすめ14
⑥ストレッチに関する論文をひたすら集めてみた
⑦柔らかくなった身体を維持する