訪問リハビリの件数や伸び率などの分析と医療費の関係、そして現状の課題を考える

資料 介護

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今の訪問リハビリの現状って、どんな感じだろう…ということでデータを調べ、そして少し分析を加えてみました。訪問リハビリは10年前と比べて3倍ほど増えましたが、全体医療費の中では微々たるもの。現状の課題は理学療法士などのリハビリスタッフの質あたりでしょうか。また、リハビリという言葉をいろんな人が雑多に使っているという問題も感じていたので、そのあたりについても書いています。

 

訪問リハビリの現状

以下、全て厚生労働省の資料からです。(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000167233.pdf
たくさんスライドありましたので、8枚ピックアップしています。

訪問リハビリステーションの請求事業所数
事業所の数は年々増えています。10年前と比べると、だいたい1.5倍に増えています。

 

訪問リハビリステーションの受給者数
当然、リハビリを受ける人も増えています。こちらは10年前に比べると2倍以上に増えています。
制度がきちんと整備されてきたので、家でもリハビリが出来る人が増えたのは良いことです。

 

訪問リハビリステーション利用者の年齢構成
65歳未満の方は、パーキンソン病などの難病の方。75歳を越えるとさらに増えてきているので、その前段階から健康に対してアプローチしていきたいですね。

 

訪問リハビリステーションの費用額
今の医療費高騰、気になりますよね。訪問リハビリでは、392億円使われているようです。
10年前と比べて3倍…なかなかです。ただし、今の社会保障費は合計121兆円。その中で医療に関わる費用は39兆円です。増えているとはいえ、39兆円の中の390億円。桁が違います。

 

訪問リハビリステーションの訓練内容
訪問リハビリでは、歩行・移動や姿勢の保持、移乗に関するアプローチが多くなっています。

 

退院後の訪問リハビリステーション開始までの期間
退院後の訪問リハ開始までは2週間未満が70%ですが、言い換えればそれ以上かかるのが30%あります。次のグラフに注目です。

 

退院後の訪問リハビリステーション開始までの期間と開始ごのADL向上
訪問リハビリは、退院してからより早く始める方がより効果的というのがわかります。「より大きな機能回復」ですって!

 

訪問リハビリステーションに置ける事業所の医師の関与
このデータは驚きました。出典元を探ったんですが、どういった形でデータをとったのかはよくわかりませんでした。というのも訪問リハビリの現場で数年経つ中で、図の左下に書かれているような内容はたしかに書かれていたりはしますが…ADL向上に繋がるような内容と思ったことはあまりありませんでした。運動負荷量や中止基準においても、病院で働いていた時と比較すればかなり微妙。一般的なガイドラインから逸脱するケースで、リハビリに対して理解が浅いと思うことがたくさんありました…
ただ、このデータがもしもし本当ならば、もっとしっかり医師と関わり、指示をもらっていくことは必要かもしれません。

 

今の訪問リハビリの課題

訪問リハビリをするのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です。この療法士たち、残念ながらスキルに結構差があります。スキルとはもちろん、患者さんの治療に対するスキルのこと。

上手く治していく人もいれば、全然ダメダメな人もいます

本来医療は、誰が行なっても同じクオリティで行えることが理想ですよね。病院やクリニックでは、同じところで働いていればそこの職場の療法士のスキルはまぁまぁ似たりよったりになる傾向があります。(研修や指導がしっかりしていればですが)

でも、訪問分野での理学療法士、作業療法士、言語療法士のクオリティはかなり差があると感じています。いくつか原因がありますが、まず他の人の目がないことが挙げられます。僕の病院勤務時代、ベテランも若手も同じリハビリ室で治療を行うので、若手がちょっと変なリハビリをしていると、すぐに周囲からの指摘が入ってたわけです。反面在宅は患者さんとマンツーマン状態。こういった周囲からの目線がないことは、その治療者のモラルが問われてきます。

加えて一日に診る患者さんの数は病院時代と比べて結構減ってしまうこと、さらに臨床力を必要としないケースも意外とあります。(治すではなくて、支えるリハビリが必要。つまり、患者さん自身が治したいと思っていないケースがあります)

この訪問分野でも、もちろん自己研鑽に励む理学療法士はたくさんいます!…が、仕組みとして治す力を磨きにくい傾向にあるわけです。

お給料面での課題

今、理学療法士のお給料を考えると病院やクリニックは結構低いです。サラリーマンの平均よりも低いんです。でも勉強会や学会、講演会などに参加すれば結構お金が飛んでいきます(基本的に自腹です)

で、理学療法士のお給料の良いのはどこかと言うと、訪問リハビリの業界。つまり、お給料欲しさに働き先を探すと、自然と訪問リハビリが選択肢として入るわけです。

もちろん在宅現場でしっかり学び、意欲を持ってリハビリを行う理学療法士がいる一方で…

意欲が乏しい理学療法士もかなりたくさんいます。病院は結構ハードに勉強しなくてはいけないので、ちょっと逃げてきたパターン。こういった質の低い療法士が担当になった場合は、患者さんの介護度の改善や、状態の維持などにマイナスの影響を与えてしまいます。

ちなみにですが、在宅分野のお給料が高くなっているのは国の政策から。医療費の高騰を防ぐため、入院日数の短縮が行われ、在宅を促進するためそちらに資本を回しています(これ、他の先進国と比べれば日本入院期間はまだまだ長いです。一部の方は入院日数の短縮に反対されていますが、国際比較をすれば国民に優しい制度であることは変わりません)

入院日数の国際比較

図:急性期平均在院日数の国際比較 – 厚生労働省

こういった国の政策、流れは変えることが出来ないし、変える必要があるとも思いません。
この大きな流れの中で、より活躍することを考えて訪問リハビリを行なっている質の高い理学療法士もたくさんいます。

僕が老後に担当してもらうなら、そういった理学療法士にお願いしたいところです。

 

これからの訪問リハビリに必要とされること

これは自分が言いたいから付け足したテーマ。業界の動向というより僕の考えになります。

これからの訪問リハビリに必要とされることは、まずはシンプルに「質の高いリハビリ」を行うこと。
これによって、

  • 身体の改善と維持
  • ADLの改善と維持
  • QOLの改善と維持

を行なっていくことが大事です。これが出来るならば、社会保障費の削減も可能ですし、老後において「身体を壊したとしても、リハビリで改善していくことが出来る」という希望を持ってもらうことも可能です。
今の現状、介護が必要になった場合のイメージって悪いですよね?
これは回復に決定打がないから。実際は100%回復するということはありえませんが、「〇〇の病気は10人中5人がリハビリで元気になる。そしてそれはリハビリのやる気次第」と言われたらどうでしょうか?

なんかリハビリ頑張ろうって思いませんか?

健やかに生きるためには「希望」を持つこと。これって大事です。さらに現場の意見として、実際にリハビリをして身体が良くなっていくケースは結構たくさんあります。結果を出せる理学療法士が増えるといいですね。

 

理学療法士が行う訪問リハビリの社会的認知を高める

リハビリというものにおいて、理学療法士などの治療の質に差があることは前に述べました。
ガ、それでも理学療法士のリハビリというものをもっと知ってもらう必要があると考えています。

“リハビリ”という言葉を考える

まずはリハビリという言葉そのものについて。

医療の世界において、医師がすること、看護師がすることはイメージ出来ますよね!?医師は診察や手術などなど。看護は看護です。でも、リハビリに関してはどうですか?

マッサージをする!?
辛く厳しいリハビリ!?

これって、実は両方ともに正解です。リハビリで行うことは「その人に合わせて、その人の生活を取り戻すこと」です。そのためには、その人の希望に合わせてオーダーメイドでプランを考えていく必要があるんです。
リハビリについてはこちらに細かく書きました。(リハビリって何するの!?意外と知らない健康に超大事なリハビリテーション

リハビリという言葉の課題

上に挙げた通り、オーダーメイドにプランを考えていくのでイメージが固まりにくいことが課題ではあるのですが、もっと大きな課題があります。

“リハビリ”という言葉をいろんな人が使っている

これが結構大きな課題だと思っています。病院で行うリハビリは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が行います。それ以外の職種の方はリハビリを実施することはありません。

でも、巷では…鍼灸の人や柔道整復師がリハビリセンターというのを運営してるケースがあります。
それに、リハビリ型デイサービスと呼ばれるものもあ、またリハ栄養やリハナースという言葉も出てきていて、よくわからない状況になりました。

“リハビリ”というものをきっちり学び、医療の現場で実践しているのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士です。リハビリを学んだことのない人が、リハビリを名乗る現状は少し問題があると思っていますし、メディアもリハビリを知らないのにリハビリの記事を出すことがあまりにも多い。

  • 鍼灸の方などが行うリハビリセンターでは、西洋医学とは離れた観点からアプローチしていることが多いように思います。(東洋医学も大事です。が、業界としていろんな研究やエビデンスを大事にする文化が根付いているとは思えません。)
  • リハビリ型デイサービスは、個人的にはリハビリとは思っていません。トレーニングマシンが置いてあるだけのところが多く、「運動習慣を作るためのデイサービス」というのが実態です。(それが悪いとは思いません。が、リハビリではありません)
  • リハ栄養は、キャッチーな言葉で栄養に対する注目を集める目的だと思いますが…リハビリを知っている栄養士さんは皆無だと思っています。軽く概念を学んだ程度です。(と言いながらもかなり大事な考え方。身体を構成するのは栄養と運動です。それをキャッチーな言葉にして認知度を高めたのは良い点ではあります)
  • リハナースはちょっとやめて欲しい言葉。訪問の分野で最近ちょこちょこ聞きますが…訪問業界には理学療法士など専門のリハビリスタッフがいます。餅は餅屋ですよね。看護を学んできた看護師さんが、リハビリを学んだリハビリスタッフを差し置いて訪問リハビリに近いことをする意味がよくわかりません。しかも「ナース」という言葉は知名度が高いので、広がりやすい。それがメジャーになるとまずいと思っています(実際現場で看護師さんに運動を依頼することはあります。ただ、わざわざこの言葉を使いアピールする理由はなんなんでしょうか…)

こういった背景から、なんとなく「リハビリ」という言葉が先行しごちゃごちゃしている感じになってしまったわけです。

理学療法士が行う訪問リハビリを知ってもらう

訪問リハビリを行うのは、理学療法士など(作業療法士、言語聴覚士)です。ここだけ、しっかりと頭に入れてもらえたら嬉しいです。今までの流れからわかっていただけたと思いますが、とにかくリハビリはいろんな人がいろんな形で実践しているわけです。

その中で、理学療法士が行うリハビリに関わるのは基本的に高齢者世帯。つまり、ネットでは情報がまわりにくいんです。そして、今まで理学療法士が情報発信していたのは、一般社会向けというよりも理学療法士向けが多かった。こういった流れから、一般の人向けに、リハビリや理学療法士の目線から語る健康を扱うこのホームページを立ち上げて運営を始めたわけです。

もう一度言いますが、訪問リハビリを行うのは、理学療法士など。

リハビリの質という課題の解決を図りながら、これからもっと「理学療法士の訪問リハビリ」が強調されていくように、尽力していければなと思っています!!!(もちろん理学療法士の普通のリハビリも)

 

 

と、いうことで今回の記事は
「訪問リハビリの件数や伸び率などの分析と医療費の関係、そして現状の課題を考える 」でした!

今回の記事を見ていただいた方には
訪問リハビリの効果をデータで語る-介護度改善の唯一の方法-」もおすすめです。
ぜひ見てあげてください〜〜